ダメケル

三十代ニートの日記

煽るな危険

昔、怪しげな儲け話を持ちかけられたことがあった。二年くらい付き合いのある友人から。たぶん自分よりも四〜五歳は年下だったはず。

 

「話したいことがあるからご飯でも食べよう」と誘われた。よくあることなのでそのときは何も気にせずに「いいよ」と返事をした。数日後、とあるファミレス。お互いの近況を話し合っていると「いま投資をしてるんだ」と相手が切り出してきた。株や土地ではなくスマホアプリの開発費用を集めていると話す。当時はLINEが普及し始めたときだった。けど、彼の言うアプリは抽象的な言葉を並べるだけでボンヤリとしかイメージできない。詳しく聞こうとしても「それを話すと二時間くらい要る」と言って逃げる。

 

とりあえずトイレに行ってくると言い席を立った。そのとき気づいたんだけど、それぞれのテーブルで何らかの勧誘が行われていた。若い男の子にスーツ姿の男性二人が熱心に商品を説明したり、チャラい男に綺麗な女性が何かの書類を書かせていたりしている。トイレで放尿しながら「あっ、これマルチじゃん」と気づいた。

 

マルチってシャンプーや石鹸なんかを売るっていうイメージがあったので、スマホアプリとは結びつかなかった。席に戻り、さてどうしようかなと考える。まずは話をそらす作戦。「そういう話ってどこから仕入れてくるの?」と聞くと、相手はよくぞ聞いてくれましたという顔をしてくる。「SNSの繋がりでセミナーや交流会に参加したんだ。そこで夢について語ったり、いまの日本は格差社会で〜」ということを語りだす。彼曰く「日本は一部の人間が富を独占している。自分たちのような人間が成功するにはリスクを取らなければいけない」らしい。

 

出資してほしい金額は「十万」。フリーターをしていた僕には厳しい金額だけど、出せないこともありません。それに相手との関係性を崩したくない。万が一、アプリが成功する可能性もある。と頭の上のほうではそういう考えはチラチラと浮かんでいたけど、底のほうではもう決まっていた。

 

「お金は出せません!」

 

それから疎遠になったというわけでもなくたまに会うこともあった。ただ、いまはもう互いに引っ越してSNSでもつながっていないので相手はどうなっているか分からない。

 

マルチや怪しい商売ってのはとにかく相手を煽りまくって洗脳してどんどん数を増やしていくんだなと思った。純粋な若者ならころっと騙されそうだ。