ダメケル

三十代ニートの日記

夫のちんぽが入らない

インパクトがあるタイトルベスト3を決めたら確実に入ってくるであろう作品です。元は同人誌のエッセイで、あれよあれよと評判が高まり、出版になったのだとか。
 
主人公のこだまはタイトルの通り夫のちんぽが入りません。どれだけ努力をしても子宮に精子を入れることが出来ないのです。ゆえに子どもは出来ません。でも、周りにそんなことは知らずに「子どもはいつできるのか」「子どもはいいよ」とプレッシャーをかけてきます。こだまが年と重ねると「最近は高齢出産は珍しくない」「ジャガー横田は四十歳を越えて出産した」とまた圧をかけてきます。
 
当人たちは何の悪意もないのだと思います。男女が結婚をして、子どもを産む。彼らには疑いようのない真理であり、それが出来ない人間など想像もできないのです。なんだか普通の暴力性、善意の凶暴性を感じました。良かれと思って振り下ろす言葉は釜のように心に刺さります。
 
これって、LGBTではないセクシャルマイノリティーの話だと思います。いわゆる世間一般の夫婦というあり方以外の男女の形をこだまさんたちは生きようとしているのです。少数派は社会から弾かれますが、とくに性のこととなると問題はより根深くなると思います。なにせそれは社会の根底にあるものだからです。
 
性以外にも辛い仕事や親との関係性などけっこうハードなお話が続くのですが、ときどきぶっと吹き出しそうになるような表現が出てきます。緩急の付け方が上手いなぁと感じました。
 
こんなに色々と抱えたら、世界をすごく恨みそうなのですが、ぎりぎりのところでいつもまっすぐなんですよね。自分だったら全部憎み倒しています。実際いまそうですもん。
 
人が人とは違った決断をしたとき、そこにはそれまでその人がぶつかってきた数々の困難があります。その過程をすっ飛ばして、自分と違うからといって非難したりするのはすごくおこがましいことだと思います。一見同じような悩みや感情でも、実はまったく違うのです。勝手に分かる分かると思い込んでるからなお悪いのです。
 
今年読んだ中で一番の本でした。
夫のちんぽが入らない

夫のちんぽが入らない